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2011年3月15日 (火)

長富 彩 ピアノリサイタル 

先日メモ書きした3月4日(金)の大阪は梅田のサンケイホールブリーゼでの長富彩さんのピアノリサイタルです。

長富彩さんについては、以前2008年の12月にCDの記事を書いています。こちらです。当時オーディオアクセサリーという雑誌に推薦CDとして掲載されていたのです。オーディオ雑誌ですので、音楽は二の次のような誤解がありますが、オーディオ評論家の推薦するものは、よく当たります。演奏もいいのです。逆に音楽評論家のオーディオ評もよく当たります。亡くなられましたが、岡俊雄さんという音楽・オーディオ評論家がいました。彼の推薦するものは、ほとんど購入の対象にしたぐらいです。私にはないバランスのとれた評論と、やさしい(優しい、易しい両方)語り口ながら、幅広く豊かな音楽及びオーディオの知識をもたれた方でした。

話が横道それてしまいました。このCDの中のラフマニノフの第2番のソナタは絶品で、ホロヴィッツ以来と感動と書きましたから、読まれた方はcalafの耳はおかしいと思われたことでしょう。長富さんはホームページ(現在のオフィシャルページではありません)を持っていらしたので、掲示板にいろいろな感想を書き込みました。そのやりとりも前記のブログに載せております。

その中で関西の公演を熱望していたのですが、やっと実現したのです。知らなかったのですが京都でも以前公演があったのですが、見逃しておりました。彩さんのご親戚が関西在住とかで関西には縁がある方だと思います。昨年の10月にデンオンからデビューCDが出ました。レコード芸術で浜田慈郎さんが準推薦、那須田務さんが推薦をしトータルで準特選(奇妙な日本語ですが)となっています。本当の意味でのデビューCDではないのですが、メジャーレーベルデビューということでしょう。そのお披露目を兼ねて東京は浜離宮、関西ではサンケイブリーゼの運びとなったようです。プログラムは下記の通りですが、関西ではCDとほぼ同じような選曲になっています。

なおピアノはホロヴィッツの愛したピアノCD368を使用しました。CDもこのピアノで録音しております。

私の感想ですが、超弩級の感動を味わったわけではありません。この理由は彩さんの演奏にあるのではなくて、私の側にあります。リストのメフィストワルツ第1番、バラキレフのイスラメイなどは1年に一度聴けば十分で、ピアノの技術的には難しくても音楽的にはさほどの名曲とは思いません。ただ2曲とも鮮やかな演奏であれば、曲の実力以上に聴衆を魅了する効果があることは間違いありません。

まず、モーツァルトのキラキラ星変奏曲ですが、変奏によって極端にテンポを動かさないオーソドックスな演奏ですが音色がやや暗いように感じました。彼女が普段配信している動画日記のような茶目っ気が発揮されればもっと豊かなモーツァルトになると思います。「モーツァルトは子供には易しいが大人には難しい」といわれてますが、そんなことを考えさせられる演奏でありました。

リストの「愛の夢 第3番」はピアノ弾きなら猫も杓子も弾く曲ですが、旋律を大きな息遣いで歌わせる、あるいは中間部の細かい音符を仰々しくない程度に鮮やかに弾くことはプロだけに許された演奏だろうと思います。そういう意味では彩さんは疑いもなくプロのピアニストです。星が煌くような細かい音符は彼女の得意とするとことろで、一音も揺るがせない技術は見事なものです。

リストの「メフィストワルツ第1番」は悪魔と妖精が交互に出てくるような曲ですが、ここでも鮮やかな技巧を持って弾ききります。危ういところなど微塵もありません。ただ中間部でファウストを誘惑する艶めかしいゆるやかなワルツは、誘惑に任せてもいいというところまであとひと息です。これはこれからの彩さんの成長に期待したいと思います。

リストも「ラ・カンパネラ」 YouTube での彼女の演奏動画は長富彩の名前ををあっという間に日本をおろか世界に広めました。ともかく苦労して弾いている姿がまった見当たりません。私のお薦めはアンドレ・ワッツですが、その次に彼女をお薦めします。この曲は難しいところでテンポを落とすことが多いのですが、彼女は乗りのよいリズムとテンポで最後まで突き進みます。今日の演奏はYouTubeより音にうるおいがあり、リズムはさらに洗練されていました。

これで前半が終わりました。後半はグレンジャーから始まります。

グレンジャーの「花のワルツによるパラフレーズ」ですが、テーマはもちろんチャイコスキーの「くるみ割り人形」の花のワルツです。これも私は彼女の演奏をYouTubeで知りました。愛らしい曲に聴こえますが、装飾がたくさんついていますので、ピアニストは大変です。ここでも彼女は細かな音符を完璧に再現します。うまい!聴かせる演奏です。ただワルツの3拍子ですが、もう少し揺らしてもよかった。これは私の好みですので、演奏の善し悪しではありません。

バラキレフから2曲です。まずグリンカの歌曲「ペテルブルグとの別れ」から「ひばり」です。この歌曲をバラキレフは悲しみ、愛おしさを華麗な変奏でもって作曲しました。ひばりは英語でSky Larkですが、日本のひばりはピーチクパーチクと賑やかですが、ロシアのひばりは日本でいうところのホトトギスの役割ですね。以下は藤井宏行さんの訳です。

 空と大地の間に
 歌は聴こえてくる
 その絶えざる流れは
 朗々と、朗々と響き渡る

 野原でその歌を歌うのは
 一体誰なのかは分からない
 歌を捧げる女達の上では
 ひばりが高くさえずっているのに

 風は歌を届けてくれる
 誰か知らないその人のところへ
 届けられた人には分かるだろう
 歌が誰からのものなのか!

 流れ行け、私の歌よ
 優しい希望の歌よ
 誰かが私を思い出し
 そっと溜息をついてくれるように

この曲マリア・グリンベルグの名演奏がありますが、彩さんの演奏もグリンベルグに劣らない名演奏でした。バラキレフのひばりはタールベーグが得意とした「3本の手」の技法が使われています。この技巧に憧れてピアノに挑戦する人も多いはずです。テーマが終わり変奏が始まるまでアルペジオとスケールのカデンツァあるいは間奏曲のような部分がありますが、ここの音量差はもっとつけて欲しかったですが、それでも美しい響きは夢見るようとは月並みでしょうか。3本の手の変奏は何もいうことはありません。美しい音楽に身を任せました。

Ayanagatomis

美しいポートレートですが、上の記事の方が本物の長富彩です。

Ayanagatomibreezes

バラキレフのの2曲目はイスラメイ。たぶん、当日のリサイタルで一番聴いて欲しい、聴かせたい曲であったことでしょう。激しい音の動きとリズムは野性的というより原始的ともいえますが、音が重なり続けても、音の切れ味が途絶えません。彼女のあの小さな身体のどこに、このようなエネルギーがあるのでしょうか。ピアノと一体となって音楽を発散しているような演奏でした。中間部のゆったりとして民謡部分は、残念ながら心に沁みる領域までには至りませんでしたが、これは彼女の若さでしょうか。CDで音だけ聴いてもびっくりしますが、目の前で演奏されると本当に驚きます。

最後の曲はスクリャービン幻想曲 作品28 スクリャービン初期の傑作として知られています。ショパンの影響がまだ残っているころの作品で、ここでも激しい和音の動きはイスラメイと同じく弾き映え、聴き映えがするのですが、ゆったりした部分はスクリャービンの世界に完全に浸ることはできませんでした。ただ全体として構成の見通しがよく、約10分の演奏時間はあっという間の出来事でした。

アンコールはショパンの幻想即興曲 これについては特に感想はありませんが、この曲はよく耳にする曲ですが、今ここで初めて聴くという印象を与えるには極めて周到な準備が要る曲です。

長く書いてきましたが、インパクトを与えるリサタルということでは大成功といえます。技術的難しい曲が多いにもかかわらず、むしろそれを楽しんで演奏することができるピアニストは極めて貴重な存在です。

ピアノを弾いている娘に刺激に与えるリサイタルでありましたが、巧すぎて参考になりません、とは娘の感想です。

参考までに、花のワルツパラフレーズ、ラ・カンパネラ、ひばりなどは彩さんの演奏がYou Tubeで楽しめます。長富彩で検索すれば見つかります。

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