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2011年8月28日 (日)

未来のピアニスト グレン・グールド~最終回

昨日ですが、とうとう最後まで読んでしまいました。青柳いづみこさんのこの本は、できれば読みたくなかったというのが、私の実感です。私がどんな本であれ読むのは、何か感動的なこと、新しい発見などに遭遇すれば、他の部分は気にしないことが多いのですが。

第14章に「二倍速の共犯者」というのがあります。グールドの熱情ソナタ(ベートーヴェン)の第1楽章のテンポがちょうどゼルキン(ルドルフ)のそれの倍の遅さで(メトロノーム速度では半分の数値)あっとことを指しています。ゼルキンの録音はいつのものかは不明です。

この章の主役は、グールドとグールドのレコードプロデューサー、アンドルー・カズディンであります。彼らが共犯であれば、グールドをも非難すべきですが、ここでは徹底してカズディンを非難しています。それも相当悪意に満ちたものです。

「彼が弾く演奏曲目もうち、幾つかは私のよく知らない曲だった。ただ、そのために却って自分がグールドにとっては願っててもないプロデューサーなのではあるまいかと思えることも一度ならずあった。というのは、そうした曲の場合、私はその作品がどのように演奏されるかべきかという問題に対して、およそ何の先入観も持たずに録音セッションに臨んだからである」(カズディンの著作グレン・グールド アット・ワークより)

これに対して青柳さんは「固定観念を持たないのはよいことかもしれない。しかし、曲を知らないまま録音に望むプロデューサーがどこにいるだろうか?」

比較して一目瞭然ですね、「先入観」を「固定観念」とわざと置き換え、「よく知らない曲」を「曲を知らないまま」とこれまた自分の文脈に沿うように置き換えています。これを悪意といわずして何といいましょうか。

まだあります。

カズディンが絶対音感がないことを非難するのですが、「グールドが録音セッションの途中で『嬰ヘ短調の部分からもう一度やり直す』と言ったとしても、カズディンは『その曲を聴いたことは覚えていても、嬰ヘ短調の部分があったかどうかまるで覚えていない』ので、その場合を特定するために楽譜を必死でめくって目で分析しなければならない」(カズディンの著作グレン・グールド アット・ワークより)

「とうことは、カズディンにはミスタッチもわからず、テキスト(calaf注楽譜)とグールドの演奏の違いもわからず、まったくチェック機能がなかったということになるのだろうか?」

もう、まったくとんでもない「いいがかり」であります。何のためにこうまで共犯者カズディンを貶めるのでしょうか。

一般的な話ですが、録音は演奏家とプロデューサーの合作ともいわれることもあります。一番有名なのが、EMIのプロデューサーウォルター・レッグでしょう。彼は自前のオーケストラを持ち(フィルハーモニアオーケストラ)シュワルッツコップのヴォイストレーニングをしたほどです。ここで、合作とは、プロデューサーが、単に演奏家のミス。思い違いを指摘するだけでなく、演奏を録音作品にするに際して大きな影響力を発揮したということを指しております。

このような部分だけこの本を評価したくはないのですが、グールドが録音プロデューサーに求める資質とはどのようなものだったか、恐らく青柳さんは知らなかったか、知っていても敢えて自分の主張のために、無視したに違いありません。このグールドの発言は有名ですので。ご存知の方も多いと思います。出典は思い出せませんが、「プロデューサーのいかなる音楽的資質も私には必要ない」だったと思います。その意味では、グールドは自分の録音にプロデューサーの影響を一切認めなかった人でした。またそれができた幸せな演奏家だったのです。

ちょうどこの本を読み終えた時、久しぶりにグールドの新譜はないかとHMVを検索しておりましたら、ありました。9月20日の発売で予約受注を募っています。カナダCBCで放送したテレビ番組の全集DVDです。グールドの死後、LD(レーザーディスク)で発売されましたが、LDは全集ではありませんでした。

「未来のピアニスト グレン・グールド」から得たものは、このCBCの全集だったかもしれません。少なくともこの本を読まなければグールドのリリースなど調べることはなかったのですから。

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未来のピアニスト グレン・グールド~最終回を参照しているブログ:

コメント

樹衣子さま。グールド関連の映画情報ありがとうございます。現在、その原作本を読んでおります。とても興味深い内容で、グールドの私生活の間隙を埋めるだけでなく、新たな事実の発見もあります。女性がもたらす音楽的、芸術的影響は古今東西変わらないという印象を、途中まで読んだ感想です。ブラームスの間奏曲が、外面的にも内面的にもなぜあんなにセクシーなのか?当時7才歳上のピアニストと、恋愛の真っ最中だったのです。

青柳さんのものは読みましたが、ミスプリント、誤りがいくつかありましたので、青柳さんご本人へ連絡いたしました。
マイケル・クラークソン「グレン・グールド シークレットライフ」は岩田佳代子さんの訳で出ましたものの、岩田さんの訳は悪訳、おかしな訳、誤訳、原書の読み落しが続出しています。また、原書にはない、勝手な追加もあるようです。ことにペイザントからの引用はトンチンカンな誤訳ですし、カズディンからの引用にも誤訳が出ています。
目下、新版を作成していまして、著作権の関係で時期をみての出版になります。

畑山さま

ご無沙汰しております。コメントをありがとうございます。青柳いずみこさんのグールド本は、強引な解釈(思い込み)が目立ちますね。彼女の著作は何冊か読み、なかなか面白いのですが、グールドに関しては多くの著作を参考にしているものの、いただけませんでした。

訳を手掛けていたマーク・キングウェル「グレン・グールド」を未知谷出版社から出すことになりました。パソコン入力を進め、章ごとにゲラを出しては、推敲、おかしな訳、誤訳がないか、確認しています。今までゲラを出したもので、おかしな訳、誤訳などが見つかったため、修正しています。
一方で、マイケル・クラークソンの新版は、「グレン・グールド 天才の愛と孤独 天才の愛とは何だったか」のタイトルで進め、道出版から出た岩田佳代子さんのものの悪訳、おかしな訳、誤訳、原書の読み落しもチェックし、リストも作っています。
専門家である以上、誤訳、おかしな訳は出せませんから、ゲラは大切です。

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